屋根の形状を徹底解説!自宅の屋根の形状は?

屋根の形状は、家の外観や機能性に大きな影響を与える要素です。雨漏りのプロの視点から見ても、屋根の種類や特徴を理解することは、家に最適な屋根を選ぶために非常に重要です。屋根形状にはさまざまな種類があり、それぞれに利点や注意点があります。家のデザインや地域の気候に合わせた最適な屋根選びをするために、まずは基本的な形状から具体的な種類までをしっかりと把握しておくことが大切です。住まいづくりの際に役立ててください。
屋根形状の基本を理解しよう

屋根形状とは?
屋根の形状とは、建物を覆う屋根の形そのものを指します。屋根は雨や風、雪から建物を守るだけでなく、外観デザインや耐久性、内部環境にも大きな影響を与えます。日本の住宅では、気候条件や地域性、設計の意図に応じてさまざまな形状が採用されています。
新築を検討している方にとっては、屋根の形状を選ぶことが家の外観や性能を左右する大切なポイントになります。一方、現在お住まいの家の屋根形状を理解することで、将来的なリフォームやメンテナンス時に適切な判断をする手助けになります。シンプルな形状から複雑な形状まで、それぞれの特徴やメリット・デメリットを把握して、理想の住まいづくりや快適な暮らしの維持に役立てましょう。
屋根の形状が家に与える影響

屋根形状は建物の印象を決定づける要素であるだけでなく、家全体の性能や維持コストにも大きく影響します。以下では、具体的な影響について詳しく見ていきましょう。
外観デザイン
屋根形状は家の外観デザインを大きく左右します。切妻屋根のようなシンプルで伝統的な形状は落ち着いた印象を与え、片流れ屋根や差し掛け屋根のようなモダンな形状は現代的でスタイリッシュな外観を作り出します。建物全体のコンセプトや周囲の環境に合わせて屋根形状を選ぶことが重要です。
機能性と雨漏りリスク
屋根の形状は、雨水の流れや雪の積もり具合に大きく影響します。例えば、切妻屋根はシンプルな構造で接合部分が棟のみのため、雨漏りのリスクが低いとされています。一方で、複雑な形状の屋根は谷や接合部が増えることで雨仕舞が難しくなり、雨漏りのリスクが高まることがあります。また、風の強い地域や積雪の多い地域では、それぞれの環境に適した屋根形状を選ぶことで、自然災害による被害を最小限に抑えることができます。
コストへの影響
屋根形状は施工費用やメンテナンス費用にも関わります。シンプルな形状の屋根は比較的施工が容易でコストを抑えられる傾向にありますが、複雑な形状の屋根は材料や手間が増えるため費用が高くなることが多いです。さらに、形状によっては定期的な点検や補修が必要な場合もあり、長期的なコストを考慮することが重要です。
高さ制限と斜線規制への対応
屋根形状を選ぶ際には、「高さ制限」や「斜線規制」といった建築基準法のルールにも注意が必要です。地域によっては建物の高さが制限されている場合があり、屋根の形状によってはこの制限を超えてしまう可能性があります。また、隣接する建物や道路の日照や通風を確保するために「斜線規制」が適用される場合もあります。これらの規制を考慮しながら屋根形状を計画することが重要です。特に、新築の場合は設計段階での確認が必須ですが、リフォームでも規制に適合するような変更を検討しなければなりません。専門家に相談しながら、法律を遵守した形状選びを進めましょう。
屋根形状ごとの特徴と種類

これから、具体的な屋根形状の名前とその特徴について詳しく解説していきます。それぞれのメリット・デメリットを知り、自分に合った屋根選びの参考にしてください。
切妻屋根(きりつまやね、きりずまやね)

特徴とメリット
切妻屋根は、2枚の屋根面が頂点で接する形状を持つ屋根です。屋根の断面は三角形を描き、両側に傾斜があるのが特徴です。その無駄のない直線的で洗練された外観から、伝統的な日本建築だけでなく、現代建築でも広く採用されています。シンプルな形状のため、設計や施工が比較的簡単で、コストを抑えられる点がメリットです。また、屋根裏のスペースを有効活用しやすく、通気性や断熱性を確保しやすい点も特徴的です。
雨漏りに強い理由
切妻屋根は、屋根のつなぎ目や接点が棟部分に限られているため、雨漏りのリスクが大幅に軽減されます。構造のシンプルさが雨仕舞の精度を高め、耐久性の向上にも寄与します。
デメリットと注意点
切妻屋根はシンプルなデザインゆえに、他の建物と差別化しにくい場合があります。しかし、構造的なデメリットは少なく、メンテナンスもしやすい点が魅力です。
寄棟屋根

特徴とメリット
寄棟屋根は、4枚の屋根面が一つの頂点(棟)に集まる形状です。屋根面は長辺と短辺の2方向に傾斜しており、切妻屋根と比べると複雑な形状をしています。寄棟屋根は四方に傾斜しており、風を分散させる構造のため、台風や強風への耐性が高いです。また、雨水の排水性にも優れており、四方に傾斜があるため雨樋にかかる負担を分散することができます。
雨漏りリスクがある箇所
寄棟屋根はシンプルな構造の部類に入りますが、「隅棟」という2つの屋根面が合わさる部分にできる斜めの稜線(りょうせん)があります。隅棟部分の雨仕舞寄棟屋根はシンプルな構造の部類に入りますが、「隅棟」という2つの屋根面が合わさる部分に斜めの稜線(りょうせん)が形成されます。この隅棟部分の雨仕舞が不十分だと、そこから雨漏りが発生することがあります。板金を立ち上げたり、棟部分に雨が入り込まないようしっかりと雨仕舞を行う技術が求められます。
採用時の注意点
寄棟屋根はその形状の特性上、斜めの部分が発生するため、加工に手間がかかります。また、材料のロスが生じるため、材料費や施工費が増加する傾向があります。さらに、棟の数が増えるため、強風で棟部分が飛ばされたり、瓦屋根の場合は地震に対して弱い傾向があります。このような自然災害が発生した後は、点検を行うことが重要です。
方形屋根(ほうぎょう屋根)

方形屋根とは、寄棟屋根の一種で、4か所の軒の長さが同じで正方形の形状をした家の屋根です。正方形のシンプルな形状であるため、建物全体のバランスが取れた外観を実現できます。この形状は、建物の外観をスッキリとした印象に仕上げ、屋根面積が比較的小さくなるため、材料費や施工費を抑えることができます。また、都市部や狭小地でも適したデザインで、空間の利用効率が高く、使い勝手が良い点が特徴です。さらに、接合部が少ないため、雨漏りのリスクも少なくなります。
片流れ屋根

特徴とメリット
片流れ屋根は、片側にだけ傾斜があるシンプルで現代的な屋根形状です。この形状は、建物の外観をスッキリとした印象に仕上げ、屋根面積が比較的小さくなります。シンプルな形状で加工部分も少なく、材料費や施工費を抑えることができます。また、都市部や狭小地でも適したデザインで、空間の利用効率が高く、使い勝手が良い点が特徴です。さらに、接合部が少ないため、雨漏りのリスクを軽減することができます。
デメリットと雨漏りのリスク
屋根の傾斜が一方向のみであるため、雨水が一箇所に集中しやすく、雨樋などの排水部分に負担がかかり、雨漏りのリスクが高まります。排水部分にゴミが詰まっていないかなど、定期的な点検が必要です。また、屋根面が一面しかないため、風の影響を受けやすく、特に台風時には注意が必要です。さらに、高さを十分に確保できないため、屋根裏の空間を作りにくく、断熱効果や空間の有効利用がしづらくなります。
太陽光発電との相性
屋根面が1面のみであるため、太陽光パネルを効率よく配置することができ、特に東面に配置すれば、太陽光発電との相性は抜群です。
入母屋屋根

伝統的なデザインと特徴
入母屋屋根は、伝統的な日本の屋根形状の一つで、屋根の上部が切妻屋根の形で、下部が寄棟屋根の形をした屋根です。この特徴的なデザインは、日本の神社や寺院、豪邸に多く見られる古典的なスタイルで、重厚感や格式を感じさせます。屋根が複数の面を持つため、装飾的で美しい外観が魅力的です。
メリット
屋根面積が広く、通気性や日当たりが良いため、室内環境を快適に保ちやすいです。さらに、デザインが優れており、外観が豪華で高級感を演出できるため、伝統的な建物には特にぴったりの屋根形状です。
デメリット
非常に複雑な構造をしており、その分施工が難しくなります。複数の屋根面や棟の接合部が多いため、建築費用が高くなる傾向にあります。また、屋根の接合部が多いということは、それだけ雨漏りのリスクも高くなります。特に入母屋部分は、雨が入りやすい隙間ができやすいため、十分な防水処理が求められます。
陸屋根(ろく・りく屋根)

特徴と使用例
陸屋根は、傾斜がない平らな屋根で、屋上があるタイプの屋根です。屋上には上がれる屋上と上ることができない屋上がありますが、いずれも屋上スペースを有効活用できるため、屋上庭園や太陽光発電システム、屋上テラスなどの利用が可能です。
雨漏りリスクとメンテナンスの注意点
陸屋根はほとんど勾配がないため、雨水が滞りやすく、雨漏りを防ぐためには材料の防水性能に依存しています。排水口の詰まりや小さな破損が原因で、雨漏りが発生する可能性が高いため、定期的な点検とメンテナンスが欠かせません。特に、防水工事のやり替えは費用がかかることが多いため、早期に対処することが重要です。
棟違い屋根

棟違い屋根は、建物の一部または全体において異なる高さや角度で複数の棟が並ぶ形状を持ち、これにより屋根の一部が他の部分より高くなったり、異なる傾斜角度を持つことでデザインに深みを与えます。さらに、異なる高さや角度の棟を設けることで、内部空間に自然光を効果的に取り入れ、室内環境を明るく快適にします。また、高さが異なる屋根形状により通気性が向上し、湿気や熱がこもりにくくなり、屋根裏の温度や湿度が安定し、快適な室内環境が保たれます。高さが異なる屋根の形状により、通気性が向上し、湿気や熱がこもりにくくなります。これにより、屋根裏の温度や湿度が安定し、快適な室内環境が保たれます。
複合タイプの屋根

複合タイプの屋根は、例えば切妻屋根と寄棟屋根など、2つ以上の屋根形状を組み合わせたものです。建物の用途や空間の制約、高さ制限などに応じて屋根形状を組み合わせることがあります。また、増築時に複合屋根が採用されることが多いです。この形状のメリットは、採光や通風を効果的に取り入れられる点です。しかし、デメリットとしては、接合部分や谷部分ができやすく、これらの部分から雨漏りが発生するリスクが高くなる点が挙げられます。
切妻屋根、寄棟屋根、方形屋根、片流れ屋根、入母屋屋根、陸屋根の5種類は、一般住宅でよく使用される屋根形状です。また、これらの屋根が組み合わさった複合屋根も多く見られ、例えば棟違い屋根や寄棟屋根と切妻屋根の複合がその一例です。複合屋根の場合、屋根の接続部分に谷が生じることがあり、谷部分には谷板金を使用します。
珍しい屋根形状のご紹介
ここでは、あまり見かけないユニークな屋根形状を紹介します。
錣(しころ)屋根

錣(しころ)屋根は、伝統的な日本の屋根形状の一つで、主に寺院や神社などの建築に見られます。入母屋屋根と形状が似ていますが、異なる点は段差を作ることで豪華さと格式を感じさせることです。切妻屋根の下に、兜の錣のようなスカート部分がついていることから、この屋根は「錣屋根」と呼ばれています。
招き屋根

招き屋根は、切妻屋根の一面が極端に短い形状を持つ屋根です。この形状が、まねきねこの手を招いている姿に似ていることから「招き屋根」と呼ばれています。縁起が良いとされ、近代的なデザインが特徴の屋根です。
越屋根(こしやね)

越屋根は、通常の屋根の上にさらに小さな屋根が乗ったような構造を持つ屋根形状です。このデザインは、主に寺院や神社などの伝統的な建物で見られることが多く、また住宅においても一部分を高くするために採用されることがあります。越屋根には、採光や通気性の向上といったメリットがあります。屋根の上に小さな屋根を重ねることで、内部に自然光を取り込みやすくし、また空気の流れを良くすることができます。
差しかけ屋根

差しかけ屋根は、片流れ屋根の一種で、屋根が一方向に傾斜している形状です。屋根の高い部分が壁に差し掛かっているのが特徴です。通常、下屋根(一階の屋根)に使用されることが多いですが、大屋根(二階の屋根)に使われることもあります。大屋根に使用される場合、デザイン性や採光、通気性の向上といったメリットがあります。
はかま腰屋根(はかまこしやね)・半切妻屋根(はんきりづま屋根)

はかま腰屋根は、切妻屋根の妻側に、屋根上部から途中まで寄棟屋根のように架けられた屋根形式です。この独特な形状が袴をはいた姿に似ていることから、名前が付けられました。また、「隅切り」「半切妻」「ドイツ屋根」といった別名もあります。主に、建築基準法に定められた「道路斜線規制」や「高さ制限」をクリアするために採用されることが多く、これらの規制を満たすことで、室内空間を狭めたり、建物を後退させる必要がなくなります。
腰折れ屋根(こしおれ屋根)・ギャンブレル屋根

腰折れ屋根は、屋根の途中で勾配が変わり、二段に折れ曲がった形状を持つ屋根です。この「折れ曲がった部分」が「腰折れ」と呼ばれる所以であり、欧米ではギャンブレル屋根とも呼ばれています。これにより、屋根面が2つの異なる角度で構成されるため、独特の外観が生まれます。この特徴的なデザインが建物に個性を与え、特に欧米風の住宅デザインに多く採用されています。また、腰折れ屋根は屋根裏の天井高を確保しやすく、屋根裏部屋や収納スペースとして活用可能です。さらに、屋根面積を抑えつつ高さを確保できるため、都市部や隣家が近い場所でも有効な形状です。加えて、急勾配部分により雪が積もりにくく、積雪地域では雪下ろしの負担が軽減される場合もあります。
マンサード屋根

マンサード屋根は、建物の四方にわたって勾配が2段階に変化する屋根形状で、いわば「腰折れ屋根の寄棟版」といえます。四面すべてで屋根が折れ曲がり、上部が緩やかな勾配、下部が急勾配となるため、最上階の居住空間を広く確保できる点が特徴です。ただし、構造が複雑な分、施工やメンテナンスのコストは高くなる傾向があります。
かまぼこ屋根

かまぼこ屋根は、その名のとおり日本の練り物「かまぼこ」の断面のように、半円筒状の丸みを帯びた形状を持つ屋根です。アーチ状の曲線が特徴で、倉庫や工場、体育館、車庫など、大型の建築物や屋根スパンを広く取りたい建物に多く採用されています。アーチ形状によって荷重が効率的に分散されるため、強度や耐震性を確保しやすく、柱や梁の本数を減らして大きな無柱空間をつくることが可能です。また、屋根が湾曲していることで雨水や雪が両側に流れやすく、排水処理を行いやすい点もメリットとして挙げられます。一方、曲面を形成するための材料加工や施工には手間がかかるため、コストが高くなる傾向があります。
バタフライ屋根

バタフライ屋根とは、屋根の両端が高く、中央に向かって勾配が下がる形状の屋根で、その形が蝶(バタフライ)の羽を広げたように見えることから名付けられています。一般的な切妻屋根とは逆方向に傾斜する構造のため、「逆勾配屋根」や「逆流れ屋根」と呼ばれることもあります。近代的・個性的な外観を演出できるため、主にモダンデザインの住宅や建築で多く採用されます。ただし、屋根が内側に向かって勾配しているため、通常の屋根より排水設計がシビアになります。雨樋やドレーンが詰まると中央部分に雨水が溜まりやすく、雨漏りのリスクが高まります。また、独特の形状ゆえに構造や排水設備が複雑で、施工やメンテナンスのコストが高くなる傾向があります。屋根の補強や防水性能の向上など、専門的な技術が必要です。
M型屋根
M型屋根とは、屋根の形状がアルファベットの「M」のように見える屋根を指します。一般的には、屋根の中央に「谷樋(たにどい)」と呼ばれる排水設備を設置し、ここで雨水や雪解け水を集めて排出します。左右それぞれに切妻屋根が向き合うため、外観が「M」字に見えるのが特徴です。ただし、谷樋部分にゴミが溜まりやすく、詰まりによる雨漏りのリスクが高いため、防水性能を維持するには定期的なメンテナンスが欠かせません。
鋸(のこぎり)屋根

のこぎり屋根とは、のこぎりの刃のようにギザギザした形状を持つ屋根のことを指します。片流れ屋根が連続して並ぶデザインにより、自然光を効率的に取り入れる構造となっています。もともとは工場などの大きな空間を明るく保つために採用されていましたが、近年ではリノベーションや個性的な住宅デザインにも活用されています。
軒清水屋根(のきしみずやね)

軒清水屋根(のきしみずやね)とは、軒先が斜めにカットされた特殊な屋根形状を指します。このデザインでは、軒の形状や長さが通常の屋根と異なり、変化が生じている点が特徴です。具体的には、軒先が斜めになっているため、屋根のけらば(端)の長さが手前と奥で違い、軒が棟(屋根の頂点)と平行ではなく斜めに配置されています。土地自体が斜めになっている場合や、敷地ギリギリに建物を建てる際などに多く採用される屋根形状です。
三方パラペット片流れ屋根

三方パラペット片流れ屋根とは、片流れ屋根の三方向(両側のけらば部分と棟部分)にパラペットを設けた屋根形状を指します。パラペットとは、建物の外周部に立ち上げられた低い壁で、屋根面を隠す役割を果たします。このデザインは近年、モダン住宅やキューブ型住宅で多く採用されており、屋根面が外から見えないため、箱型(キューブ型)のシャープでモダンな外観を実現できます。建物全体が水平的なデザインに見えるだけでなく、パラペットが立ち上がっていることで屋根端からの落下防止効果も期待できます。一方で、パラペット内部に雨水が溜まりやすい構造上、排水計画や防水処理が不十分だと雨漏りの原因になる可能性があります。そのため、定期的な清掃や点検が不可欠で、特に排水設備(雨樋やドレン)の管理が重要です。
合掌屋根(がっしょうやね)

合掌屋根は、手を合わせたような急勾配の茅葺き屋根を特色とする日本の伝統的建築様式で、特に豪雪地帯である岐阜県白川郷や富山県五箇山などに多く見られます。最大の特徴は、屋根の角度が非常に急であるため、降り積もった雪を自然に落とすことができ、建物への荷重を軽減する機能を果たすことです。屋根裏の空間は広く、かつては養蚕のための場所や農作物の乾燥場として利用されるなど、実用的な利点も備えています。また、釘を用いずに木材と植物の縄で組み上げる「叉首構造」により、強風や地震に対する柔軟性が高い点も特徴的です。一方、茅葺き屋根は約20〜30年ごとに葺き替えが必要で、多くの人手と専門技術、コストがかかります。さらに、茅は可燃性が高いため、防火対策が課題となるほか、後継者不足や都市化の影響で合掌造りの住宅は年々減少傾向にあります。それでも、世界遺産に登録された地域もあるように、伝統的な景観や文化的価値を守るための取り組みが続けられており、合掌屋根は厳しい気候を克服しながら培われた日本の住文化を象徴する貴重な建築様式として高く評価されています。
鳩小屋・ドーマー

鳩小屋という言葉には、主に二つの意味があります。一つ目は、陸屋根の上に設置される箱状の構造物で、内部の配管や換気ダクトを保護する役割を果たすものです。形状が鳩を飼う小屋に似ていることから、このように呼ばれています。

二つ目は、ドーマーとも呼ばれる屋根から突き出した小さな窓付きの構造物で、採光や通風を目的として設置されます。一般住宅でも見られますが、屋根との接合部分が増える分、雨漏りのリスクが高まる点には注意が必要です。
屋根形状の選び方と注意点
地域ごとの気候や風土を考慮
屋根形状を選ぶ際は、気候や風土に適したものを選ぶことが重要です。
- 雪が多い地域では、自然に雪が滑り落ちる急勾配の屋根や、雪下ろしがしやすい屋根が適しています
- 台風や強風の多い地域では、風の影響を受けにくい低勾配で安定した形状の屋根が望まれます
- 多雨地域では、雨水の排水がスムーズに行えるよう、シンプルな構造で雨仕舞がしやすい屋根を選ぶことが大切です
建築デザインとの調和
屋根形状は、建物の外観デザインに大きく影響を与えます。例えば、伝統的な和瓦の住宅には、「入母屋屋根」が馴染みやすく、落ち着いた印象を与えます。一方、モダンデザインの住宅では、「片流れ屋根」やフラットな「陸屋根」、「差し掛け屋根」が採用されることが増えており、スタイリッシュで洗練された外観を演出します。
コストとメンテナンス性
屋根の形状によって、施工コストやメンテナンスの頻度、費用が変わります。シンプルな形状(切妻屋根・片流れ屋根)は施工しやすく、材料のロスも少ないため、比較的コストを抑えられます。一方、複雑な形状の屋根はデザイン性が高いものの、施工に時間がかかり、材料のロスも多くなるため、コストが増加する傾向にあります。また、将来的なメンテナンス費用も考慮し、長期的なコストを抑えられる屋根形状を選ぶことも重要です。
雨漏りリスクへの対策
接合部が多い屋根(複雑なデザインの屋根)は、施工精度によって雨漏りしやすくなるため、信頼できる業者に依頼することが重要です。また、接合部は屋根本体部分よりも劣化が早いため、雨漏りのリスクが高くなります。特に谷部分は雨水が集中しやすく、一度劣化すると部分的な交換が難しいため、定期的な点検と清掃を行い、早めのメンテナンスを心がけましょう。
太陽光発電システムとの相性
太陽光発電を設置する場合、屋根形状は発電効率に大きく影響します。片流れ屋根は、南向きであれば太陽光パネルを広く設置でき、発電効率が高くなるため、最も相性の良い屋根です。切妻屋根は、北面ではなく南面や東西面に効率よくパネルを配置できれば、十分な発電量が期待できます。また、寄棟屋根などに対応した斜めにカットされた太陽光パネルも発売されており、選択肢が広がっています。一方で、太陽光パネルを設置するとメンテナンス費用がかかるほか、屋根に穴をあける必要があるため、雨漏りのリスクが高まる可能性があります。そのため、メンテナンスコストを考慮し、売電価格の試算を含めて慎重に計画を立てることが重要です。
屋根形状の変更やメンテナンスについて
屋根形状の変更は出来る?
既存の屋根形状を変更する場合、大掛かりな工事が必要となり、葺き替えや構造の補強にかかる費用が発生します。そのため、基本的には屋根の形状を変更することはほとんどありません。ただし、増築時や雨漏り修理のために、勾配や水の流れを調整する目的で形状を変更した例はあります。
雨漏りリスクを減らすメンテナンスの重要性
トタン部分の錆が進行すると穴が開き、雨漏りの原因となります。漆喰の劣化や瓦のズレ、接合部分のコーキングの劣化も雨漏りを引き起こす要因です。さらに、排水部分にゴミが詰まることでも雨水が適切に流れず、雨漏りにつながる可能性があります。台風の後など、定期的な点検は重要ですが、悪徳業者によるトラブルも少なくありません。点検商法によって不安を煽られたり、故意に破損されたりして、不要な工事を押し売りされるケースがあります。そのため、信頼できる業者以外には屋根に上がらせないことを強くお勧めします。
まとめ:屋根形状の特徴を把握して最適な選択を
屋根の形状は、建物のデザインだけでなく、耐久性やメンテナンス性、コストにも大きく影響します。地域の気候や風土、建物の用途、将来的なメンテナンスなどを考慮し、最適な屋根形状を選ぶことが重要です。
家に合った屋根形状を選ぶポイント
家に合った屋根形状を選ぶポイント
- 積雪や強風などの気候条件に適した形状を選ぶ
- デザイン性と機能性のバランスを考える
- メンテナンスのしやすさを重視する(雨仕舞がしやすく、修理しやすい形状を選ぶ)
- 将来的なリフォームや太陽光発電の導入も視野に入れる
コストとメリットを総合的に判断しよう
屋根の形状ごとに、施工費やメンテナンス費用、耐久性、デザイン性が異なります。初期コストを抑えるだけでなく、長期的なメンテナンス費用や耐用年数を考慮し、トータルコストのバランスを取ることが大切です。
最適な屋根形状を選ぶことで、快適な住環境を維持し、建物の寿命を延ばすことにつながります。専門業者と相談しながら、自宅に合った屋根を選びましょう。