屋根の勾配とは?

2寸・3.5寸・4寸・6寸の屋根勾配を比較した4枚組画像

屋根の勾配の基本(はじめに)

屋根の勾配とは、屋根の傾斜の角度を示し、建物のデザインや機能に大きく影響を与える重要な要素です。

この記事では、屋根の勾配について詳しく解説し、新築、リフォーム、増築の際に適切な勾配を選ぶためのポイントをお伝えします。

また、「屋根雨漏りプロ」は雨漏りのプロとしての視点から、屋根の勾配と雨漏りの関係についても詳しく解説します。

勾配とは?屋根の角度とその重要性

屋根の勾配は、建物の外観や耐久性、雨漏りのリスクに関わる重要な要素です。勾配が急なほど雨水や雪がスムーズに流れるため、雨漏りのリスクが軽減されますが、同時に施工コストも高くなる傾向があります。

また、急勾配の屋根はデザイン的に視覚的なインパクトを与えるため、建物の外観が特徴的で魅力的になることもあります。ただし、急な勾配では施工が難しくなるため、経験豊富な職人が必要となり、施工期間が長くなる可能性もあります。

さらに、家の高さ制限や北側斜線制限といった法的制限により、希望する勾配が取れないケースもあります。これらの制限により、屋根の勾配を選ぶ際には、建築基準法などのルールを考慮することが不可欠です。

一方で、緩やかな勾配の屋根はコストを抑えられる利点があり、メンテナンスもしやすくなりますが、雨水が滞留しやすいため、雨漏り対策が特に重要です。

勾配の単位「寸」とは?初心者向け解説

勾配の「寸」という単位は、日本特有の尺貫法に基づくもので、垂直方向と水平方向の比率を示します。例えば、3寸勾配とは、水平1メートルに対して垂直に30センチメートルの高さがあることを意味します。

このような表記方法を寸法勾配(尺貫法勾配)といいます。

3寸勾配を示す住宅の屋根イラスト。

建築のプロである屋根職人や設計士は、3寸勾配や3.5寸勾配といった表現でやり取りを行うことが一般的ですが、一般の方には角度で理解する方がわかりやすいことが多いです。

最近のスマートフォンは水平器機能がついているので、屋根に登らなくても下からご自宅の屋根の傾斜を計測することが可能です。

スマートフォンの水平器アプリを使って屋根の勾配角度(-16度)を計測している様子。

このように下からでも、屋根の傾斜とスマートフォンの水平器機能を使って角度を測れます。

以下に、寸法勾配(尺貫法勾配)とそれぞれの角度を表した表を示しますので、ぜひ参考にしてください。

寸法勾配 角度
1寸 5.7度
2寸 11.3度
3寸 16.7度
3.5寸 19.3度
4寸 21.8度
4.5寸 24.1度
5寸 26.5度
5.5寸 28.8度
6寸 30.9度

この表を参考にすると、16度の傾斜は約3寸勾配に相当することがわかります。

屋根勾配が与える影響とは

雨漏りリスクと勾配の関係

屋根の勾配は、雨水がどのように流れるかに大きな影響を与えます。勾配が緩やかな場合、雨水が滞留しやすく、雨漏りのリスクが高まります。

また、勾配に対応していない屋根材を選んでしまうと、適切に排水できずに雨漏りを引き起こす可能性があります。そのため、適切な勾配を選び、それに対応した屋根材を使用することが雨漏り対策において非常に重要です。

屋根面積と勾配の関係

屋根の勾配が大きくなるほど傾きが急になるため、建物の平面的な広さが同じでも、屋根の実際の面積は大きくなります。

この違いを正しく計算するために、勾配に応じた「伸び率」という係数を掛けて屋根面積を求めます。

2寸勾配と6寸勾配の家を比較し、建物の平面面積100㎡の場合の屋根面積がそれぞれ約102㎡と117㎡になることを示した図。

伸び率の係数は下記の表です。

寸法勾配 伸び率
1寸 1.00
2寸 1.02
3寸 1.04
3.5寸 1.06
4寸 1.08
4.5寸 1.10
5寸 1.12
5.5寸 1.14
6寸 1.17

屋根の勾配が大きいと、材料費や施工コストが増加する傾向がありますが、その分屋根裏の空間が広がり、断熱性能が向上します。さらに、屋根裏をロフトとして活用したり、収納スペースを確保することができるため、居住空間を有効に利用できるという大きなメリットがあります。

2寸勾配と6寸勾配の家を比較し、勾配が大きいほど屋根裏空間が広くなることを示した図。

勾配別のメリット・デメリット

緩勾配(1~3寸以下)のメリット・デメリット

3寸勾配以下の勾配の小さい(緩やかな)屋根を緩勾配(かんこうばい)と呼びます。ここでは、緩勾配のメリットとデメリットについて詳しくまとめています。

緩勾配のメリット

  • 建物の高さを抑えられる

    勾配が小さいため高さが低くなります。高さ制限がある場合や増築時に屋根の高さを抑えることができ、設計の自由度が高くなります。

    建物の高さを抑えられるイメージイラスト。
  • 施工コストの抑制

    勾配が緩やかな屋根は、急勾配の屋根に比べて使用する資材が少なくなり、施工コストを抑えられます。また、施工がしやすく作業効率が向上するため、結果的にコストの低減につながる可能性があります。

    施工コストの抑制をイメージしたイラスト。
  • メンテナンスが容易

    勾配が緩いため、屋根に上がる際のリスクが少なくなり、点検や修理の作業が比較的容易に行えます。これにより、定期的なメンテナンスがしやすくなり、建物全体の寿命を延ばすことが期待できます。

    メンテナンスが容易であることをイメージしたイラスト。
  • 風の影響を受けにくい

    勾配が緩やかな屋根は風の影響を受けにくいという特長があります。風による屋根材の剥がれや飛散のリスクが低減され、強風地域での安心感が得られます。

    風の影響を受けにくいことをイメージしたイラスト。
  • 耐震性の向上

    勾配が緩やかな屋根は重心が低くなるため、建物全体の耐震性が向上します。重心が低いことで地震時の揺れが軽減され、構造的な安定性が高まります。
    また、地震の際に屋根の部材が落下しにくく、安全性が向上する点もメリットです。

    耐震性の向上をイメージしたイラスト。

緩勾配のデメリット

  • 雨漏りのリスクが高まる

    勾配が小さいと雨水の流れが遅くなり、雨水が屋根に滞留しやすくなります。その結果、排水性能が低下し、適切な排水設備がない場合には雨漏りのリスクが高まります。屋根材の隙間や接合部から雨水が侵入しやすくなるため、雨漏りが発生する可能性があります。

    雨漏りのリスクが高まることをイメージしたイラスト。
  • 屋根材の選択肢が制限される

    勾配が小さい屋根には使用できる屋根材が制限されます。特に2.5寸勾配以下の屋根には、瓦などの横葺き屋根材は適しておらず、使用を避けるべきです。新築でも屋根材の選択ミスによって雨漏りが発生するケースが多く見られます。また、増築時に勾配が小さくなることが多く、適切な屋根材を選ばないと雨漏りのリスクが高まります。

    屋根材の選択肢が制限されることをイメージしたイラスト。
  • 汚れやコケがたまりやすい

    勾配が小さいため、雨水で洗い流されにくく、落ち葉や埃がたまりやすく、コケも生えやすくなります。そのため、定期的な清掃や点検が必要です。

    汚れやコケがたまりやすいことをイメージしたイラスト。
  • 断熱性能への影響

    緩勾配の屋根は屋根裏の空間が狭くなるため、断熱層としての利用が難しく、断熱性能が急勾配の屋根よりも劣ることがあります。ただし、断熱材を十分に入れることでこの問題はある程度解消できます。

    断熱性能への影響をイメージしたイラスト。
  • 積雪時の荷重リスク

    勾配が緩やかな屋根は雪が積もりやすく、その荷重により屋根や建物の構造に負担がかかることがあります。特に豪雪地帯では、積雪によるリスクが高く、雪下ろしが必要となる場合もあります。

    積雪時の荷重リスクをイメージしたイラスト。
  • 太陽光パネルの発電効率低下

    緩勾配の屋根は、太陽光パネルの最適な角度を確保しにくいため、発電効率が低下する可能性があります。適切な傾斜角度が確保できないと、受光量が減少し、期待する発電量を得られないことがあります。一般的に、太陽光パネルの最適な角度は30度とされており、6寸勾配が理想的な条件と言えます。

    太陽光パネルの発電効率低下をイメージしたイラスト。
  • 設計およびデザインの制約

    緩勾配の屋根には、設計やデザインにおいて制約が生じることがあります。特に伝統的な和風建築や急勾配を特徴とするデザインには適していないことが多いです。

    設計およびデザインの制約をイメージしたイラスト。

並勾配(3.5寸以上4.5寸以下)のメリット・デメリット

3.5寸から4.5寸の屋根は「並勾配(なみこうばい)」と呼ばれ、緩勾配でも急勾配でもない中間的な勾配として、一般的な住宅に広く採用されています。

並勾配のメリット

  • 使用できる屋根材が豊富

    並勾配は多くの住宅で採用されているため、ほとんどの屋根材を使用することが可能です。この幅広い選択肢により、デザインやコストに応じた屋根材の選定がしやすくなります。

    使用できる屋根材が豊富なイメージイラスト。
  • メンテナンスが可能

    勾配が大きくないため、点検や修理の作業が可能です。これにより、定期的なメンテナンスが行いやすく、建物全体の寿命を延ばすことが期待できます。

    メンテナンスが可能であることをイメージしたイラスト。

並勾配のデメリット

  • 雨漏りのリスクはある

    並勾配は急勾配ほど水の流れが良いわけではないため、特に雨量が多い場合には雨水の滞留や排水性能に注意が必要です。適切な排水対策を講じておかないと、雨漏りのリスクが残ります。

    雨漏りのリスクがあることをイメージしたイラスト。
  • 積雪時の荷重リスク

    並勾配の屋根は急勾配ほど雪が自然に落ちにくいため、特に豪雪地帯では積雪による荷重のリスクが高くなります。その結果、雪下ろしが必要になる場合もあります。

    積雪時の荷重リスクをイメージしたイラスト。

急勾配(5寸以上)のメリット・デメリット

5寸勾配以上の屋根を急勾配屋根と呼ばれます。急勾配屋根のメリットデメリットををまとめました。

急勾配のメリット

  • 雨水がスムーズに流れる

    急勾配の屋根は勾配が大きいため、雨水が自然に速やかに流れ落ち、排水性能が非常に高くなります。このため、雨漏りのリスクを大幅に軽減することができます。

    雨水がスムーズに流れることをイメージしたイラスト。
  • 屋根裏の空間を有効活用できる

    急勾配屋根は屋根裏の空間が広くなるため、ロフトや収納スペースなど、建物内部の空間を有効に活用することができます。これにより、居住空間の有効面積を広げることが可能です。

    屋根裏の空間を有効活用できることをイメージしたイラスト。
  • 雪下ろしが必要ない場合がある

    勾配が急なため、雪が自然に滑り落ちることが多く、積雪地帯でも雪下ろしの手間を減らすことができます。特に積雪量が多い地域ではこの点が大きなメリットです。

    雪下ろしが必要ない場合があることをイメージしたイラスト。
  • 断熱性能が上がる

    急勾配の屋根は屋根裏に空気の層が出来、それが断熱層となるので断熱性能が向上します。これにより、冬の寒さや夏の暑さを軽減し、省エネルギー効果が期待できます。

    断熱性能が上がることをイメージしたイラスト。
  • デザイン性の向上

    急勾配の屋根は外観が特徴的で、美しいシルエットや立体感を持つことが多く、建物のデザイン性を向上させる効果があります。特に、線のシャープさや立体的なフォルムが建物の美観に寄与します。洋風の住宅やクラシックな建物では、急勾配の屋根が好まれることが多いです。

    デザイン性の向上をイメージしたイラスト。
  • 太陽光パネルの発電効率向上

    太陽光パネルの最適な角度は30度とされており、6寸勾配が理想的です。また、急勾配の屋根は隣接する建物の日陰の影響を受けにくく、発電効率を最大限に引き出すことができます。

    太陽光パネルの発電効率向上をイメージしたイラスト。

急勾配のデメリット

  • 施工費が高くなる

    急勾配の屋根は施工の難易度が高くなるため、施工費が高くなる傾向にあります。足場の設置や安全対策が必要となり、屋根面積も増えることで使用する建材も多くなるため、全体的に施工費が増加します。

    施工費が高くなることをイメージしたイラスト。
  • 風の影響を受けやすい

    勾配が急な屋根は風の影響を受けやすく、強風時に屋根材が剥がれたり、飛散したりするリスクがあります。特に台風や強風の多い地域では、耐風対策が重要です。

    風の影響を受けやすいことをイメージしたイラスト。
  • ちょっとしたメンテナンスでも足場が必要

    勾配が急なため、屋根に上る際には足場が必要となり、簡単なメンテナンスでも大掛かりな準備が必要です。これにより、メンテナンス費用や手間が増加することがあります。

    ちょっとしたメンテナンスでも足場が必要なことをイメージしたイラスト。
  • 建物の高さが増す

    急勾配の屋根は建物の高さが増すため、高さ制限がある地域や隣接する建物との調整が必要な場合には設計の自由度が低下することがあります。

    建物の高さが増すことをイメージしたイラスト。
  • 雪崩のリスク

    雪が滑り落ちやすいというメリットがある反面、大量の雪が一度に滑り落ちることで、下にいる人や物に被害を与えるリスクがあります。そのため、積雪時には雪止め金具の設置が必要です。

    雪崩のリスクをイメージしたイラスト。
  • 耐震性が低下する

    急勾配の屋根は建物の高さが増し、重心も高くなるため、特に重い屋根の場合、地震時に揺れやすくなるリスクがあります。

    耐震性が低下することをイメージしたイラスト。

屋根材と勾配の適合性

各屋根材には最低限必要な勾配があり、この条件を満たさない場合、雨漏りのリスクが高まります。新築であっても、プロの設計士や建売業者がこれを守らず、雨漏りが発生するケースが見受けられます。

新築時はルーフィング(防水シート)が機能しているため、屋根材の下に水がまわっても雨漏りの症状がすぐには現れないことがあります。

そのため、家を購入する予定の方や増築を検討している方は、必ず屋根の勾配と使用する屋根材の適合性を確認することが必要です。

緩い勾配で起こる横葺き屋根の雨漏りリスクの図解。

横葺きの屋根

横葺き屋根は、金属板やスレートなどの材料を横方向に重ねて施工する屋根のことを指します。瓦屋根も横方向に重ねて施工するため、広義には横葺きの一種と考えられます。以下に、主要なメーカーの横葺き屋根製品とその最低勾配をまとめました。

メーカー名 製品名 最低勾配
ニチハ 横暖ルーフ
プレミアムS
2.5寸
アイジー
ルーフ
スーパーガルテクト 2.5寸
ケイミュー カラーベスト 2.5寸
ケイミュー ROOGA 3寸
鶴弥 スーパートライ110 2.5寸
栄四郎瓦 各種 2.5寸

これらの横葺き屋根は新建材で改良された製品が多く、比較的緩やかな勾配でも使用可能です。しかし、古い建材の場合、最低でも3寸勾配以上が必要なケースが多く見られます。

また、屋根の長さや形状によっても規制があり、必要な最低勾配が高くなることもあります。設計や施工の際には、建材の特性や屋根の形状を考慮して、適切な勾配を設定することが重要です。

縦葺きの屋根

縦葺き屋根とは、主に金属系の屋根材を使用し、縦方向に重ねて施工する屋根のことを指します。昔ながらの瓦棒屋根から、近年の立平屋根、波板、波型スレートなど、長尺の材料を横に継ぎ目を作らず1枚物として納める場合、これらはすべて縦葺きの一種とされます。

以下に、主要なメーカーが提供する横葺き屋根製品と、その最低勾配についてをまとめました。

メーカー名 製品名 最低勾配
セキノ興産 立平ロック 0.5寸
セキノ興産 折板シリーズ 0.3寸

基本的に、2寸勾配以下の屋根を住宅に使用する場合、選択肢としては立平葺きが主流となっています。一方、倉庫や体育館、駐車場の屋根には、折板屋根もよく利用されています。

また、波板や波型の屋根については、縦方向に1枚物として使用する場合、最低でも1寸以上の勾配があれば適用可能です。

立平屋根・波板・波型スレート・折板屋根の比較画像。

まとめ

まとめと書かれたデザイン画像。

屋根の勾配は、建物のデザイン、雨漏りリスク、施工コスト、居住空間などに大きく影響します。急勾配、並勾配、緩勾配にはそれぞれメリットとデメリットがあり、設計目的や地域の気候を考慮して最適な勾配を選ぶことが重要です。

急勾配の屋根は排水性能が高く、屋根裏を有効活用できますが、施工費が高くなります。緩勾配の屋根はコストを抑えやすいですが、雨漏りや積雪リスクに対する対策が必要です。並勾配は幅広い屋根材を使用できる中間的な選択肢です。

屋根材選びでも勾配との適合性が重要で、適切でないと雨漏りリスクが高まります。設計段階から勾配と屋根材の適合性を確認することで、建物の耐久性と快適さが向上します。

屋根の勾配を理解し、建物や地域に合った最適な屋根を選ぶことで、安心で快適な住まいを実現できます。屋根や雨漏りに関するお悩みや疑問がありましたら、ぜひ「屋根雨漏りプロ」にご相談ください。私たちは長年の経験と技術を活かし、お客様の大切なお住まいをしっかりサポートします。無料相談も承っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

高橋聡太

高橋 聡太

アイセンスド株式会社 代表取締役
雨漏り診断士

「屋根雨漏りプロ」として、全国で屋根や雨漏り修理を専門に提供しています。高校卒業後、住宅リフォーム業界に転職し、豊富な現場経験を積んで独立しました。特に雨漏りの原因調査や散水試験に強みを持ち、数多くの修理実績があります。徹底した原因追究に基づき、お客様のニーズに合った最適な修理方法を提案しています。

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