和瓦・日本瓦の種類と魅力を解説

和瓦とは?日本の伝統が息づく屋根材
和瓦(日本瓦)は、日本の伝統的な屋根材で、数百年以上にわたり多くの家屋や神社仏閣の屋根を守り続けてきました。素材は粘土で作られているため「粘土瓦」と呼ばれています。粘土瓦は、高温(1000度から1500度)の窯で焼きあげることで非常に高い耐久性を持ち、長期的に家屋を守る屋根材です。
瓦は耐久性に優れており、美しいデザインと機能性を兼ね備えた日本の文化遺産でもあります。特に、和瓦の代表的なタイプには「いぶし瓦」や「釉薬瓦」があり、それぞれ特徴や用途が異なります。これから詳しくその違いや産地ごとの特徴をご説明いたします。
和瓦の歴史
日本での瓦の歴史は、飛鳥時代にさかのぼります。中国や朝鮮から伝わった瓦が、当初は寺院や宮殿に使用され、次第に一般住宅へと広がりました。瓦はその耐久性や防水性能が評価され、特に日本の湿度の高い気候にも適応した優れた屋根材として発展してきました。

瓦の素材や形、産地による種類と特徴
瓦には、素材や形、産地など、さまざまな種類があります。
瓦の素材による種類
釉薬瓦
釉薬瓦は、焼成前に釉薬(陶磁器に使われるコーティング材)をかけて焼き上げた瓦です。釉薬による美しい光沢が特徴で、カラーバリエーションが豊富で、グレー、銀黒、青、オレンジ、緑、黒などさまざまな色合いがあります。光沢のある仕上がりは、建物の外観に高級感を与え、耐久性も高く、風雨に強いのが特徴です。新しい住宅や現代風のデザインの建物にもよく使われます。
いぶし瓦
いぶし瓦は、釉薬をかけずに燻製(いぶし)によって仕上げる瓦です。焼成時に発生する煙で表面に銀灰色の光沢を出すのが特徴で、日本の伝統的な美しさを保ちつつも、防水性・防火性に優れています。新品のいぶし瓦には炭素被膜がついており、素手で触ると手の油分と反応して跡がつくため、搬入や施工時には必ず軍手を使用します。 時間が経つにつれ、いぶし瓦は1枚1枚に微妙な色のムラが生じ、独特の風合いを楽しむことができます。これは、経年変化によってしか得られない特徴です。寺院や古い民家に多く使用されているのが特徴です。

瓦の形状について
瓦には、さまざまな形状があり、用途やデザインに応じて使い分けられます。以下に代表的な3つの形状を説明します。
J型瓦
J型瓦は、その「J」がJapan(日本)を意味し、典型的な和瓦、日本瓦です。緩やかなカーブを描いた形状が特徴で、雨水を効率的に排水できるデザインとなっています。主に和風建築に使用され、日本の気候に適した屋根材として広く支持されています。

S型瓦
S型瓦は、その形状がアルファベットの「S」に似ていることから名付けられた瓦で、スパニッシュ瓦やスペイン瓦とも呼ばれます。洋風建築に多く使われ、緩やかな波状のデザインが特徴です。このデザインにより、雨水の排水がスムーズであり、耐風性も高い瓦として知られています。S型瓦は、モダンな住宅や洋風の建物にもよくマッチし、日本の住宅でも人気のある瓦の一つです。

F型瓦(平板瓦)
F型瓦は、平坦でシンプルな形状を持つ瓦で、平板瓦(へいばんがわら)とも呼ばれます。名前の由来には2つの説があり、1つは「Flat(平ら)」の頭文字を取ったというもの、もう1つはフランス瓦を参考にしたため「F型」と名付けられたという説です。F型瓦は、洋風住宅だけでなく和風住宅にも使用され、そのシンプルなデザインが幅広い建築スタイルに対応しています。最近では、軽量化された軽量防災瓦としても人気があります。

M型瓦
M型瓦は、1枚の瓦に2つの山がある形状から、アルファベットのMのように見えることから名付けられた瓦です。ふた山瓦とも呼ばれ、F型瓦の一種に分類されます。主に洋風屋根に使用され、立体感を持つデザインが建物に個性を与えます。M形の特徴的な形状は、踏み割れに対する強度が高いため、瓦の厚みを薄くすることが可能です。これにより、M型瓦は軽量化されており、瓦の中でも軽量のものとして知られています。

瓦の産地ごとの特徴
和瓦の中でも、特に三州瓦、淡路瓦、石州瓦が有名で、日本全国で広く使用されています。これらは三大瓦産地として知られ、それぞれに特徴があります。

三州瓦(愛知県)
三州瓦は愛知県三河地方で生産され、耐久性の高さから全国的に広く使用されています。釉薬瓦といぶし瓦の両方が生産され、国内の瓦市場シェアの約60%を占めています。特徴は、粘土の質の高さで、西三河地方の粘土はカオリンを31%含み、滑らかで美しい仕上がりが得られます。また、鬼瓦を作る「鬼師」も多く、この地域に伝統技術が受け継がれています。
淡路瓦(兵庫県)
路瓦は兵庫県淡路島で生産され、いぶし瓦と釉薬瓦の両方が作られています。特にいぶし瓦の生産が盛んで、「なめ土」と呼ばれる良質な粘土が使用されます。焼成温度は1000℃前後と他産地より低いものの、耐久性と美しさを兼ね備えた瓦が作られています。いぶし瓦の生産量は全国一です。
石州瓦(島根県)
石州瓦は島根県で生産され、1200℃以上の高温焼成により、凍害に強い瓦として知られています。日本海側や北海道など寒冷地での使用が多く、釉薬瓦では全国シェアの約20%を占めます。独特の赤褐色は、出雲地方の「来待石」を使用して生まれる色合いで、山陰地方の景観に欠かせない存在です。

関東瓦(埼玉、茨城、栃木、群馬)
関東瓦は、埼玉、茨城、栃木、群馬の各地で生産されます。埼玉には児玉瓦や秩父瓦など5つの産地があり、茨城では笠間やつくば周辺が主な生産地です。栃木では箱森瓦が始まりで、野州瓦も有名です。群馬では藤岡瓦が生産されています。
遠州瓦(静岡県)
遠州瓦は静岡県西部で製造され、巴川(清水)の粘土を原料にいぶし瓦が作られてきました。地元の田園の床土を使った粘土が特徴で、滑らかで美しい銀色の光沢を持つ遠州鬼瓦が有名です。
美濃瓦(岐阜県)
美濃瓦は岐阜県で生産され、良質な土と高度な技術を活かして製造されています。特に耐寒性に優れたいぶし瓦が特徴で、全国の社寺・仏閣やお城、住宅など幅広く使用されています。
能登瓦(石川県)
能登瓦は能登半島で生産され、ドブづけという技法で裏面まで釉薬を施し、風雪に強い瓦が作られます。黒光りする美しい瓦が、能登の伝統的な建築や景観を彩る象徴となっています。

越前瓦(福井県)
越前瓦は1200℃の高温で焼成され、吸水率が低く、寒冷地でも凍害に強い瓦です。渋い銀鼠色が特徴で、焼きムラによる絶妙な風合いが独自の美しさを生み出しています。
京都瓦(京瓦)(京都府)
京都瓦は、平安時代から続く伝統的な瓦で、現在は700種類以上の瓦が生産されています。鬼瓦や軒瓦など役瓦が中心で、寺院や神社、町家などに広く使われ、手作りならではのいぶし銀の風合いが特徴です。

奈良瓦(奈良県)
奈良瓦は、元興寺の屋根に使われている日本最古の瓦です。710年の建立時に飛鳥寺から移された約600枚の瓦のうち、170枚は飛鳥寺創建時のものです。1400年の歴史を経て現存する驚異的な耐久性を持っています。

明石瓦(兵庫県)
明石瓦は、兵庫県明石市周辺で生産されるいぶし瓦が主流です。軽量で耐久性が高く、淡路瓦と似た特性を持ちながら、独自の風合いと防水性能で関西地方を中心に広く使われています。
菊間瓦(愛媛県)
菊間瓦は、愛媛県今治市菊間町で生産され、750年の歴史を誇ります。いぶし銀の独特な色合いと光沢が特徴で、伝統的な美しさと高い耐久性を持つ瓦です。
安芸瓦(広島県)
安芸瓦は、江戸時代初期から広島県で作られる伝統的な瓦です。三原市や東広島市で生産され、柔らかな風合いと落ち着いた色合いが特徴です。
沖縄瓦(赤瓦)
沖縄の赤瓦は、琉球王朝時代に首里城や士族の建物で使用され、明治時代以降は一般家庭にも広まりました。赤瓦と白漆喰のコントラストは沖縄の象徴的な風景で、シーサーや屋敷囲いにも使われています。黒色の泥岩(クチャ)80%、赤土20%を練り、1030〜1050℃で焼成され、ゆっくり冷まして完成します。

和瓦のメリット・デメリット
和瓦のメリット
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耐久性
風雨や紫外線に強く、非常に長寿命です。
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断熱性
夏は屋根の温度上昇を抑え、冬は熱を逃がしにくい特徴があります。
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防火性
火に強い素材で、火災時にも有効です。
和瓦のデメリット
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重量
和瓦は比較的重いため、建物全体にかかる負荷が大きく、耐震性が求められる地域では注意が必要です。
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コスト
高品質な素材と伝統的な技術を使用しているため、他の屋根材に比べて施工費や材料費が高くなることがあります。
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施工の難しさ
和瓦の施工には専門技術が必要なため、熟練した職人による作業が求められ、施工期間が長くなることがあります。
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